迷姫−戦国時代

あれからめっきり不安定なまま時が過ぎていきました




今日も狛津さんは稽古に向かわれ、一方私は家の主の帰りを待つだけだけでした




そんな時にとんでもない訪問者が来たのでした




「どうぞ」

「ありがとうのう」

御茶を入れ差し出し分厚い手が湯呑み茶碗に手がかかる



この方は狛津さんの師の一人で硲(はざま)様。枇杷国の中で有力な地位を持ち世間に認められた方。勿論その顔は私の国まで広く知れ渡っており、何人もの一族の者がこの方に返り討ちにされたのやら・・・。それよりも何故私に尋ねてきたのか疑問でしかなりませんでした





「娘さんは、確か狛津の弟子であったな。あやつは確かと教えておるんじゃろうな」

「はい。師匠にはそれは大層お世話になっております。まだまだ学ぶ事は沢山あり、尊敬する方です」



そうか、と目を細め喜ぶ硲様に弟子思いの善い師であると一目で分かりました






「娘さんが来て一年半ばか・・・。



悪い事は言わぬ、今すぐ去られよ。儂に免じて今だけ目を瞑ろう・・・・若い間者殿よ」




先程までと一転し張り詰めた空気が二人の間を流れた

この方は私の正体を気づいていた


全てを見抜かされた目が私を見つめている

身体中が硬直し掌には汗が滲み出ている

動揺を隠せない私は最早敵う筈は無いと理解しやっとの思いで口を開いたのでした