不意に壁側に置かれている琵琶に目に留まる
それを手元に持ち撥を握り弦を鳴らそうとするが一向に音は鳴らない
「・・・狛津さん」
切なく呟いた私はただただ琵琶を眺めるだけである
この琵琶は、狛津さんが私の為に造って下さった大切な琵琶
――――「え、この琵琶を私に下さるんですか?」
「ああ、持って無い様だったし勝手に造らせてもらったよ」
「そんな、わざわざ私の為に気を使わなくても・・・。っそれに「俺があんたに使って欲しい為に造ったんだ。気をつかったつもりは更々ない。
・・・それに師は弟子が立派に成長するのを見守るのが師の務めだからな」
そんなやり取りを思い出していると頬に何かが滴るのに気いたのでした
「・・・っ嘘、何で泣いてるの、私。
何で、何で・・・・・」
涙が止まらないの?
私はそんな筈ないと信じ急いで台所に向かい水の入った桶に手を差し込み何度も涙を注いだ
それでも涙は一向に止まる事はなく、次第に胸が裂ける様な気もしていく
狛津さんの顔を思い出すと涙の量は増え身体の中心が激しく脈打つ
それはとても辛く苦しく、己に何が起こっているのが分からない状況に陥っていました
その時私は、この思いの意味を知るすべもありませんでした

