迷姫−戦国時代

いつ見ても月は綺麗だ

今宵は新月のようだな



ああ満月まで愛おしい



だが新月もまた美しい


洗練された新たな月
暗闇から浮き出る



か弱い様でしっかりと我等を映し照らす



腰に置いてある琵琶に手を掛けようとするが某は誓った筈だ


手を琵琶から退けまた月を見上げる







リン、



リン





鈴の音か

可笑しいな・・・某の領地に入り込む輩が居るとはな





鈴の音は止み代わりに別の音が聞こえる



「久しゅうの。





          六凪」


六凪と呼ばれた者は目を見開いた

だが直ぐにほくそ笑み声のする方へ振り返る



「久々だな。


          皇朱」



懐かしい友は某を見つめ口を開く

「お主の呪縛を解いてもらいたい。あの娘は私(わたくし)の“使え人“じゃぞ」

「そうかあの娘がか・・・。だがそなたの気は確かか、あの娘、厄介なのを持っておるのにの」

「御託はいらぬ。早うせい」

六凪と呼ばれた男は顔をしかめてから諦めた様で側に置いてあった琵琶を手に取り一本弦を鳴らした


扇子で口元を隠し手に持っている琵琶を見つめる

「琵琶か・・・。久々にそなたの琵琶を聞かせてくれぬか?」


皇朱の言葉に六凪は微笑んだ

「我が友の為なら、今宵は封を解こう」

二度と弾かないと決めた某の琵琶


あの日以来、祝い事には弾こうとしなかった我が琵琶

随分と待たせてしまった様だな

再会の祝いに某はもう一度お前を弾く事にする



さあ共に祝おう






「樂崋(らくげ)」











枇杷に潤いをもたらす



神六凪の琵琶


琵琶の名手と認められし男の琵琶が


400年の月日が経ち


今宵再び始まったのであった