迷姫−戦国時代



狛津はあの場から去り目的も無しにただひたすら歩み続けた



俺は何も考えたくねえんだよ

止めてくれ、俺に構うんじゃねえ・・・!


漸く立ち止まると何処からともなく自然と琵琶の演奏が耳に留まる

そうだ、祭が近いから皆が連習に励むのである



一つ一つの一音までがまるで己を責めているようで無性にイライラを覚えた

「ーーーーーっクソ!」


















恩師と呼ばれた三人は帰っていき美羽はまた一人家に居るのであった


「はぁ・・・。今日はもう止めよう。この間々では駄目ね・・・」


そろそろ夕飯の準備をしなくてはいけないわね

作業用具を片付け台所へと向かい米を研ぐ為に水を汲みに戸口に手を掛けた




「あんちゃーん!・・・ってあれ違った」

戸口から出て蛇口に向かうと目の前に年は九つぐらいの少年が姿を現した



「おねーちゃん誰?あんちゃんのこれか?」
ニヤニヤと嬉しそうな顔で小指を立てる少年に若干苦笑いをする

「いいえ違うわ。私はただ宿に泊まらせてもらっている商人よ。今は一人でお留守番だけどね。何か用なのぼく?」

「ぼくじゃないやい!おいらは里丸!」


元気よく返す里丸に美羽は微笑み目線を合わせる為に少し屈んでお互いに向き合う


「里丸君ね、分かったわ。私の事は由利と呼んでね」

「分かった、由利ねーちゃんだな!それよりもあんちゃんがおいらの竹とんぼ直してくれるって約束したのにさ」



昨夜の竹とんぼは里丸君のだったのねと納得しながら手早く水を汲み里丸も誘い二人で中へと向かう



里丸を居間に居させ夕餉の準備に取り掛かろうとしてふと気づく

「もしかしたら狛津さん遅くに帰ってくるかもしれないけど里丸君は大丈夫なの?」

今はまだ夕方前だが直に夜になってしまう。恐らく彼は狛津さんが帰って来るまで居続けるだろうから、そしたら彼の親御さんが心配するのではと思ったのだ

「大丈夫!おいらん家すぐそこだから。それに母ちゃん達も分かってるだろうしさ」

昔の子は意外としっかりしてるのだなと思い知れた