迷姫−戦国時代

困惑している美羽の姿に硲と呼ばれた男が横にいる槙島に睨みつけたが槙島は何もしてない様に澄ました顔でありそれに一つ溜息をしたのであった



「娘さんよ悪いが今日はもうおいとまさせて貰うよ。また再度来る事にしよう。狛津にも宜しと伝えといてくれると嬉しいのじゃが」


何とか返事を返そうとした美羽に新たな声で掻き消された







「何やってるんだ」



四人が見た先には今まで見た事も無いような程冷たい表情をし立ち尽くしてこちらを睨んでいる様な目でこちらを見つめていた



「もう一度言うが何やってるんだ。俺は五年前に二度と琵琶は弾かないと言っただろうが」


鋭く研ぎ澄まされ尚且つ怒りを感じさせる程の声を出す狛津に思わず冷や汗が流れる





「狛津よ、お主の気持ちも良く分かる。だがの、神に選ばれし者が義務を与えられておる。それが狛津、お主なのじゃ。お主が出ねば当主様、ましてや神が許さぬ。どうか己の過去を咎めるのは止めお主は新しく生まれ変われ」


「これはお前の我が儘で許されるんじゃ無いんだぞ」


「過去と今は違うのだ狛津」




硲達の渾身の説得に狛津が返した言葉は何とも悲しいものだった





「帰ってくれ。






幾ら恩師方の頼みでも、俺は全てを捨てたんだ。


あの琵琶と共にな・・・」



狛津が答えた言葉の最後はとても弱々しくその場から立ち去った後に先程の狛津の姿に三人は目を思わず伏せた