「体を冷やすよ」


突然の声に、彼女はハッと我に返る。

バルコニーに出て、ふと昔の事を思い耽っていたのだ。


家に帰る事は、許されない。
それだったら、せめて――――


「・・・・・せめて、お城(ここ)から出させてください」


あたしは、こんなところに居ていい者じゃない。

それに、メイドさん達の仕事を増やしてしまい、迷惑をかけてしまうだけ。



「それも無理な事だよ。 アンタは城外に出てはいけない」


「どうして――ッ」


「その理由を、アンタが知る必要はないよ」


その瞳は冷たく、 思わず彼女は怯んでしまい、声が出なくなる。