何気ない穏やかな日々。
そんな中、王子様の胸の内に芽生えてしまった、黒い感情。


【―強引は愛ゆえに】


「少し休憩をとりますか?」

書類を読み終え、一息ついたクロードに、ガイルは言った。
机の上にはまだまだ書類が山積みである。


「あぁ、少し休むよ」

腰を上げ、彼は部屋から出て行こうとする。

「どちらに?」

こんな事を聞くなんて、愚問同然かもしれない。
なぜなら王子は、必ず決まった言葉を言うのだから。


「もちろん、シンデレラの所さ」


その言葉に、ガイルはふっと表情を和らげる。
それはまるで、王子(彼)が今日も幸せそうでなによりだ、とでも言っているかのようだった。


けれどそんな彼が数日後に苦しむことを、まだ誰も知らない。