「あの……」

震えた声で、彼女は口を開ける。
僅かに、手も震えていた。

その手をクロードは優しく握る。
それだけで、彼女は少し安心した。


「どうして……舞踏会を開いたのですか?」

必死に声を振り絞り、不安そうに、彼を真っ直ぐと見つめる。

「全て、父上の仕業なんだ」

「王様、の……?」


「……僕は、父上から多くの仕事を与えられた」

そして、国王は彼に言った。
〝これら全てを三日以内で終わることが出来なければ、婚約は破棄とする〟と。


「その仕事を片づけるのに、必死だったんだ。 ようやく手に入れた君との永遠を、決して失いたくなかった。 だから、君の前に姿を現す時間がなかったんだ」


三日以内に終わらすことが出来れば、次にはまた新たな仕事を与えられる。
それも、同じく条件付きだった。


「ごめんよ。君に伝えようと、思っていたんだ。 けれど、時間が合わなくて……」

きっとこの二人の時間のズレも、父上は予想していたに違いない。
あの人は、わざと僕らがすれ違うように仕向けた。