「僕は誰かを愛するなんて、初めてなんだ」


シンデレラは口を挟まず、彼の言葉を大人しく聞く。


「物心ついた時から、僕は一人ぼっちだった。 父上と母上は、政略結婚だった。それ故に、二人の間に愛はなかったんだ」


忌々しい過去を、今でも鮮明に覚えている。


「そんな二人の間に生まれた僕は、ただこの国を君臨する存在になるためだけに、育てられた」


( 邪魔だ。 向こうへ行け )


「……決して、愛など貰う事はなかった。 周りに居る者達も、誰も僕と関わろうとしなかったんだよ」


それは、“次期国王”という立場故に。


「僕と関わろうとしたのは、王の権力と財産を目的とした、貴族だけ。 次期王である僕の妃にさせようと、己の娘を連れ、そして多くの財宝を抱え、奴ら貴族は僕に近寄ってきたんだ」


( みんな、権力と財力が欲しいだけ。 人間なんて、欲塗れな生き物だ )


「幼かった僕の心は、いとも簡単に、歪んでしまったよ。 そして僕は、他の者を嫌った」