「王子様」


シンデレラの父が、静かに彼に話しかける。

「私がこんな事を言う権利はないのかもしれませんが……」


幼い彼女を独り置いて、自分は出て行ってしまった。
あの子の心は、傷を入れてしまえば、いとも簡単に崩れてしまうと分かっていながら、シンデレラを、置いていった。

裏切られたと、あの子は思っているに違いない。


「シンデレラが悲しんでいる時は、どうか彼女を独りにしないで、傍に居てやってほしいのです」


自分は最低な親だと分かっている。
まだ幼い彼女の傍に居てやれず、さらなる孤独と悲しみを与えてしまった。


「……もうシンデレラには、辛い思いを――――寂しい思いを、味あわせたくはないんだ」


その切ない彼の言葉に、クロードは黙り込んだままだった。