「……これであの子を救えたとは思わないでくださいね、王子様」


その不気味な笑い声と共に、アリシャスは口を開けた。

悲しみの涙は何処へやら、今ではシンデレラに対する嫉妬の瞳をしている。


「なにがいいたい」


無意識に、王子の声が低くなった。


「みんな、王子様のお相手が奴隷だなんて、認めませんわ」


( だが所詮、奴隷だろう )


父上の言葉が、クロードの脳裏に過る。


「みんな、みーんな、シンデレラを批難するでしょうね。 あの憐れなほど、無垢な心を持っているあの子は、きっと批難される度に、こう思うでしょうよ。『やっぱり、奴隷は誰にも好かれない』ってね」

そして悲しみ続けるに違いないわ、とアリシャスは続けた。


「…………」


クロードは何も言わず、そのままガイル、そしてシンデレラの父を連れて、屋敷を後にした。