「また、一人になるかと 思いました」


震えた声で彼女は小さく呟き、クロードの服を、強く握り締める。


優しい母様が 大好きだった。
けれど彼女は、父様とあたしを残して 先に一人、空へいってしまった。


父様も彼女と同じくらい、大好きだった。
幼い頃のあたしにとって、父様が 心の支えだったのに、彼もあたしを残して 何処かへいってしまった。


あの日、あの時のように、 目を覚ませば、今度は 王子様が何処かへ行ってしまっているのではないかと、不安だった。


「大丈夫。 僕は、此処にいる」


愛しい人が傍から離れ、そして一人きりになる あの悲しさは、もう味わいたくない。


「君を一人にはしないよ」


父様も、彼と同じ言葉を言っていて、けれどその言葉は、いとも簡単に 偽りになってしまった。


―――あぁ、どうか 王子様(あなた)のその言葉は 偽りにはならないで。