「・・・・シンデレラは、お前に引き渡すつもりだった」


穏やかな風が、月光に煌めく 彼の髪をふわりと靡かせる。
クロードの瞳は 切なげだった。


「お前なら、彼女を大切にしてくれる。 シンデレラを傷付ける事も、悲しませる事も、きっとない」


そう、僕は確かに そう思っていた。
それは今でも、変わらない。


「けれど僕は・・・・」


あの無垢な少女を、僕を受け入れてくれた あの子を、手放したくないと 強く願ってしまった。

ウィズ(彼)もまた 彼女に想いを寄せていると分かっておきながら、僕は この想いを抑える事は出来なかった。



「なぁ、クロード」


黙りこんだ王子の姿を見て、ウィズは柔らかい声で、


「お前が彼女と結ばれて、僕は嬉しいよ」


静かに そう言った。