静かに、王子は彼女に触れるだけのキスをする。


「・・・・・あ、の・・・」


恥ずかしいのか、頬をほんのりと桃色に染めて、けれどどうしたらいいのか分からず、シンデレラは困った表情をする。


「王子さ、」


彼を呼ぼうとした、その時、彼女は優しく抱き締められ

「―――クロード」


そして耳元で、そう囁かれた。


「それが、僕の名前」


「―――っ」


一国の君主になる、その時まで 王子の名前は知られてはいけない。
それが、この国の仕来たり。

それまでに彼の名前を知っていい者は、血縁関係のある者と、王子が本当に信じている者だけ。


「クロード、様」


小さな声で彼の名を呼べば、彼はシンデレラの顔を見つめて 優しく微笑んだ。