「此処に居たら、風邪が移ってしまいます。・・・・だから―――」


「ちょ、ちょっと待っておくれ、シンデレラ」


「・・・・?」


そのぽかんとしている表情に、少し不安そうな、その瞳に、つい彼女を抱き締めたくなる衝動に駆られるが、 彼は ぐっ、とそれを抑える。



「僕は他の女(ひと)の所になんて、行っていないよ」


「・・・・けれど毎夜毎夜と出掛けているのは、そのせいだと、噂が・・・」


その言葉を聞いて、王子は小さなため息を零す。


確かに、そう思われても仕方がないのかもしれない。
けれど僕は、他の者なんて どうでもいい。


「毎晩出掛けていたのは、ある人を捜していたためだ・・・」


あまり深く、彼女には知られたくない。
でも 変な噂を信じられるのは、嫌だから。


「・・・・ある人、ですか?」


その声に、応える事は出来ず、 彼は黙りこむ。