「王子様は、・・・・お優しい方ですね」


その言葉に 彼は眉を寄せる。


「あたしをお城に閉じ込めたのは、自由のない奴隷に 王宮での優雅な暮らしを味あわせてあげるため、ですよね」


「なっ―――」


「多くの人が、王宮での暮らしを望んでいる・・・。 永久(とわ)の富を手に入れられる。 それは、奴隷にとっては喉から手がでるほど、羨ましいことだから・・・・」


「違う。 シンデレラ、アンタを此処に閉じ込めているのは―――」


( 本当の自由を、与えるために )


その言葉は 言えなかった。

彼女は何も知らなくていい。
そう自分で決めていた事だから、 言う事は、出来ない。


ギリッと 強く歯を食いしばる王子の姿を、シンデレラは 見つめていた。


そして力なく、微笑む。


「もう いいんです」


それはあまりにも、 儚い声だった。