城下街に溢れる人々を押し退けるように城へと走る。
お父様っ!ルカ!みんなっ!!
声にならない声をあげる。
「あっ!」
誰かの足に躓き、大きく転んでしまった。
痛い。
座り込んで足をさする。
しかし、その痛みで一瞬にして気持ちが冷静になった。
“戻ってはいけない”
頭の中で警報が鳴る。
そうだ。
今戻ると、確実に殺されてしまう。
戻れない…。
身体が恐怖で震えてくる。
私には戻る勇気がでなかった。
しゃがみこんだまま、城を見つめる。
どうして…。
どうして、こんなことになってしまったか。
やっと戦が終わり、条約を結んだことで平和に暮らせると思っていたのに。
涙で目が霞み、私は俯いた。
街の人々は呆然と城を見つめ、口々に叫んでいる
「城が攻め込まれていたのか!?」
「戦争は終わったんじゃなかったの!?」
「国王様は!?姫様はどうされたのだ!?」
「この国はサルドアのものになってしまったってこと!?」
パニックになる人々を、私は抑えることが出来ない。
抑える技量もないし、なにより今身分を明かしたら、大騒ぎになってしまう。
そしてサルドアの人間に見つかり、捕まってしまったら終りだ。
そうだ。私がここにいることがバレてはいけない
私は生きなければならない。
生きて、国を取り戻さなければ。
私は城を睨むようにジッと見つめた。



