「初めて楽器工房に行ったとき」

卓也は少し遠い目つきで、ポツリポツリと話し出した。

「二階からユリが、降りてきて。白いTシャツに、ジーンズのスカートだった。僕を見て、にこっとして、「いらっしゃい」って言ったんだ。その君を見たときに-」

卓也は、楽しい夢を見ているみたいに、フッと笑みを漏らす。

「なんてきれいで、かわいらしい人なんだろうと思ったんだ。
この人とずっと一緒にいられる人は、どんなに幸せだろうって。

だから-」

卓也は、意外な答えに呆気に取られている百合の顔を見た。

「僕のほうが最初に、君を選んでいたんだよ?」