「ねぇ、わたしのこと、どれくらい好き?」

「この部屋のあっちからこっちまで、好きだよ」

「わたしなんか、この式場のあっちからこっちまで」

「僕なんか、宇宙のあっちからこっちまで」

だめだ、だめだ!
百合は質問シミュレーションを途中で強制終了させた。
この会話は、まさに頭にバが付くカップルの会話だ。


「ねぇ、わたしが死んじゃったらどうする?」

「僕も死んじゃう~」

だめ、これもだめ!


「どうしたの、ユリ。元気ないよ?」
人生最高の日には似つかわしくない、沈んだ面持ちの百合の顔を、卓也がのぞきこんだ。

「タクは・・・」

何と聞いたらいいかまだ結論が出ないまま、百合は口を開いた。

「・・・いつから、わたしの事を好きだった?」
気づいたら、そう聞いていた。

「え?」

卓也の目が、一瞬泳いだ。

タク、あなたはなんて答えるの?
「君と同じ」?
「分からない」?
「忘れちゃった」?
卓也の答えを聞くのが怖くて、百合はうつむいた。

「・・・」


卓也は少し黙って考えていた。

それから、なぜか笑い出した。


「あのね」