卓也は、すぐに来てくれた。

「できた?」

「うん」

百合は立ち上がって、ドレスを卓也に見せた。
試着のときは見ているけど、きちんとメイクまでして見せるのは初めてだった。

「わぁ」
卓也は、口をぽかんと開けたまま一言も発さない。

え?かわいいの?かわいくないの?

しびれを切らした百合は、思わず聞いてしまった。
「わたし、かわいい?」

「うん、かわいいよ」

「ほんとに?」

「うん、ほんと」

「ほんとにほんと?」

「うん、ほんとにほんと」


「ほんとにほんとにほんと?」
と、よっぽど聞きたかったのだが、百合はそれをなんとか抑えた。
これ以上この不毛な会話を続けても、あまり意味がない。

でも、「ほんとにほんと」では、百合の不安を取り除くことはできなかった。

あなたはもしかして、また優しい嘘をついてるの?

百合は、卓也の本当の気持ちが知りたかった。
それが知りたくて、「うん」では答えられない質問を一生懸命考えた。