「北海道には、兄弟で一緒に来たの?」


なんとなく落ち着かない気持ちでいるのが嫌で、あたしから話題を変えた。すると蒼太君は、仕方なさそう言い方で返してきた。


「まあね。昔っからそうなんだ。俺の行く所に必ず着いてくる」


そう言って笑い声を漏らした蒼太君。

幼き日の彼の後ろを、更に小さな弟が追いかけて歩く……そんな兄弟の姿を想像した。

兄弟のいないあたしには、そういうのって微笑ましくてうらやましく思えて。

だけど蒼太君の声が、急に色を変えたの。


「後ろから追いかけてきて、いつの間にか追い越して行くんだ、いっつも……」


暗くて表情は伺えない。でもいつかのように寂しげな空気が辺りを漂っていた。

どんな言葉を返したらいい?

迷っているうちに家の前まで来てしまい、あたし達はいつもより幾分ぎこちなく別れの挨拶を交わした。

そしてたった今並んで歩いてきた道を、一人っきりで折り返して行く彼の後ろ姿は、あたしを言い知れない気持ちにさせたんだ。