それは、よく日に焼けた胸板。


……誰 ――?


放心状態になっているあたしの頭の上から、低い声がした。


「タオルとって」


見上げるとそこには、嫌味なほどに整頓された美しい顔があって。

そう。カッコいいじゃなくて、キレイでも足りない。“美しい”そう形容するのがピッタリな顔立ち。

背の高さに見合わない小さな顔の中で長い睫毛が瞬いて、額にかかる前髪をはらいながら頭を振ると、飛来した小さな滴があたしの鼻先を濡らした。

あたしは無意識のうちに、捕われたように視線を奪われて、そのまま見入って……ううん。見惚れていたの。

唇は、桜の花びらのように薄いピンク色で。ゆっくりと開かれて、そこから零れ落ちるように彼が言葉を放った。


「タ・オ・ル」


じれったそうなその言い方にやっと我に返ったあたし。慌てて後ろを向き、ランドリーボックスに置かれたタオルを掴んだ。

でも、タオルの下に隠れていた物を見てギョッとしたんだ。

それは、男物の黒い下着だった ――