「ただいまー」


玄関の扉を開けて呼びかけたのに、家の中は静かだった。

いつもはすぐにサキさんの返事が返ってくるのに……鍵が開いていたから裏庭かな?

そう思って居間の窓から庭を見渡してみたけど、サキさんの姿は見当たらなくて。

どこへ行ったんだろう……。

首を傾げ洗面所の前までへ行き、勢いよくドアを開けたあたしはぴたりとその場に立ち止まった。

……浴室からシャワーの音が漏れていた。

夕方の四時前。
こんな時間にサキさんがお風呂に入るなんて珍しい。


「サキさん?」


返事がないのは、勢いのあるこの音のせいかな。

普段のサキさんは必ず浴槽にお湯をはる。

高齢だし、こんな風に立ってシャワーを浴びることなんてないのに。

というか、曇りガラスの向こうの人影は、サキさんにしては大きすぎる。

そう思った次の瞬間、水の流れ出る音が止んだ。

とほぼ同時に開かれたドア。

そして、立ちこめる真っ白な湯気と共に細長いシルエットが目の前に現れたんだ。