それは、通夜が終わってすぐのことだった。


「水内由那さん、だね?」


その人は言った。

通夜が始まる時、あたしは後ろから見ていた。時間ぎりぎりに会場へ入ってきて、親族席に座った彼の姿を。

隣には4、5歳くらいの男の子と、その更に横に赤ちゃんを抱いた女の人が座っていた。

声を潜めて言葉を交わすその様子を見て、家族なんだと察した。



「はじめまして。
僕の名前は、笹本 雅樹といいます」


三十代半ばくらいだろうか?
見方によると、もっとずっと若く見えるかもしれない。

あたしの父親というには、若すぎると思った。

童顔で、どちらかというと小柄。

……あたしと似ている?

自分では、よくわからない。