「連休が近いから、飛行機混んでなかった?」

言いながらキョウコさんは、奥の台所へ消えていった。ゾウのような大きなお尻を揺らしながら。


「混んでたっていってもさ、みんな座れるんだべ?」

ジンさんの隣に腰を降ろしていたお爺さんが訊いてきて、さわやかイケメンがぷっと吹きだした。

「そんなのチョウさん当たり前だよ」

と、やっぱり爽やかな笑顔で。


もうほとんど髪の毛の無い頭を撫でながらチョウさんが応じる。

「まーたソウタは、年寄りばバカにするでぇ」


ソウタ ――? 
そっか。名前、ソウタっていうんだ。

そこへお茶とお菓子が載ったお盆を持ったキョウコさんが戻ってきて、あたしの顔を繁々と見つめた。


「それにしても、あんたって美人だねぇ~。ねぇ、ソウちゃん?」


ふいに振られたソウタ君が「へ!?」と素っ頓狂な声をあげた。