3月。

隼太を乗せた羽田行きの便が飛び立った。

あたしは、握っていた手をそっと開いた。

『由那が持っていてよ』と渡されたアトリエの鍵。

丘の上には、隼太が描いたもう一人のあたしが居る。

一緒に見るのは恥ずかしいと思った。だから、まだ対面はしていない。

後から一人でこっそりと見に行くつもりだ。


『ひまわりの咲く季節には、帰ってくる?』そう尋ねると

『ひまわりの季節が終わるまでには、帰るよ』と笑って言った。


ただ待つんじゃなくて、あたしも何かしなくちゃと思ってる。

春が来る。

小さくても一歩を踏みださないと。