「まだ幼ない時に事故で両親を亡くした雅樹を、私たち夫婦が育てたんだ。私達夫婦には子供がいないから、甥というより本当の息子のようでね。

…君のことも、もっと早くに知っていれば……」


申し訳なさそうにそう言われ、あたしはどんな顔をしていいのか困った。

でもこの人は、あたしの存在を前から知っていたわけではないんだ。

あたしが、北海道のサキさんの家に来るようになった理由が知りたかった。

だけど、会ったばかりのこの人には訊けない。

あたしの父親を知る人には会うけれど、本人には会ったことがない。

顔を会わせる日は、いつか来るのだろうか ――?