「前は俺の顔見るだけで強張ってたから。だから昼飯誘った時もあっさりOKもらえて、実を言うと調子くるっちゃったんだよね」


片眉をつり上げ笑う隼太があたしを見る。
目と目が合った時、顔が熱くなるのを感じて顔を背けた。


「……じゃあ、断ればよかった?」


床を見つめたまま言い返した言葉は、ぶっきらぼうに放たれた。

でも隼太は変わらないトーンで返してくる。


「それでもいいよ。落ちるまで何回でも俺、アタックするから。そのほうが逆に燃えるし」


反射的に視線を上げる。

濡れ髪の隙間の奥に存在する瞳に捕えられ、鼓動が早まるのを感じた。

どうして……胸の奥がすごく熱いんだけど……。


「……っ、
 無駄話してないで、ほら、さっさと食べちゃってよ」


こんなに動揺してること悟られたくない。だから背中を向けてそそくさと食事の用意を始めた。


……絶対にヤバいんだ、このままでは――


胸の中で、その言葉をまた繰り返す。

このままではハマってしまう。

苦手だって思ってたのに、思っていたはずなのに。