少しして脱衣所から隼太が出てきた。初めて会った時のように上半身は何も纏わず、首からタオルを下げている。

凛とした瞳が、濡れた前髪の奥から覗いた。

濡れているせいか、その上の眉も普段より凛々しく映って、妙に男っぽく見える。

ゆっくりと視線を降ろす。

骨ばった肩………でも決して痩せ過ぎなわけじゃない。

その証拠に、首から下げたタオルの隙間から鍛えられた腹筋が見えた。

モデルをしていただけあって、さすがにスタイルがいい。

それに顔だって………中々いないよね、こんな綺麗な――


「なに見惚れてんの?」


不意に放たれた言葉に我に返った。


「え」

「いま、俺に見惚れてたっしょ」


イタズラっぽく言った言葉と表情に、胸の中があおられる。


「別にそんなんじゃないからっ。もう、そんなことより早く着替えてよね!」


思わず言い返すとクスリと笑い声が聞こえた。


「……なによ?」

「やっぱ、そのほうが由那らしいよ」

「らしい、って?」

「ん? いやさ、最近の由那って前みたいなオッカナイ顔しなくなったし、俺がなんか言ってもあんまり噛みついてこなくもなったなーって」


オッカナイ顔? 噛みつく?
あんまりじゃない。人を猛獣みたいに……。