入学式は特に特別なイベント、
事件も起きる事なくつつがなく終わり、
いよいよクラスごとのHR。

同じ中学校からの同級生とは、
見事に別れ離れ。
もともと、それほど親しくもなかったし、
新生活を迎えるのはちょうどよい。

HRのスタートは、お約束の自己紹介タイム。
ここで外すと、今後この一年、
いや高校生活3年間を無駄にしてしまう
かもしれないという、強迫観念から
プレッシャーを感じている者、
そつなく可もなく不可もなく無難に
こなす者が入り交じる中、
自分の番がやってくる。

「えー、東向ヶ丘中の沢田総司です。
特にこれといった特徴もない、
無害な人間なのでよろしくお願いします」

パチパチパチ。

挨拶も普通なら、当然のように
皆の反応も普通。

そう。これでいいのだ。

クラスの初めましての挨拶で、
いきなりキャラ付けされても、
むこう三年間が辛いつーの。

つつがなく、挨拶が終わる
はずだった予定調和のHR。
ただ一つのことを除いては。

欠席は確か、なかったはずだが
なぜか空席の机が一つ。

迷子になるような複雑な校舎でもない。
入学式後、いきなりの空席を
作る輩がいるのか。

もしかして、時代錯誤、
漫画の世界でしかない、
屋上にて時間をつぶす
エクセントリックな生徒が
存在するのだろうか。