息を殺し、足音を立てないようにそっと家に入った。
 廊下からリビングの音を盗み聞き、大きく溜め息を吐いた。
 そういえば今日は、病院の日だったっけ。


 やっぱり自分の部屋が一番落ち着く。
私が唯一安らげるのは、この部屋だけ。
 立て掛けてある姿見をひょいと覗けば、腫れた顔の女が1人。
ああもう最低あの男。


 痛んできた顔をさすりながらベッドに横になる。
もうこのまま寝てしまおうか。
 いや、ダメ。
マニキュア落とさなきゃ。
除光液でラメ入りのマニキュアを落とした。
 バイバイ最低暴力男。


落とした後はキレイに爪の手入れをして、また色を乗せる。
次はラメの入ってないサディスティックなピンク色。
 こんばんは、毎朝電車で一緒の高校生君。