「ところで、雪村くん」


「なんだ花岡」


「昨日はお父さんがお邪魔したみたいで」


「は?」


お父さん?


「どんな男かは知らないが、おれの家にお前の父親だと思うようなやかましい男は来なかったぞ」


「やー、でも、はっきりとスパゲッティをいただいてきたと」


「あ、やっぱりあの人はお父さんだったんだ」


若葉が口をはさんでくる。


「花岡って言ってたから、もしかしたらって思ったんだけど、やっぱりそうだったんだ」


「うん、そうなんだ。本当にごめんね、ウチのお父さん、何か粗相しなかった?」


・・・あの男が、花岡の父親か。


言われてみれば、図々しいところはそっくりだ。


「かなりしてくれたぞ。花岡、父親の教育がなってないんじゃないか」


「本当に、いつも注意してるんだけど聞かなくて・・・」


申し訳なさそうに目を伏せる。


あのような親父で、色々と苦労しているようだ。


「まあ、気にすんな」


おれはできる限り穏やかに言った。


そうしてやりたくなった。


「今度はおれたちふたりでお前ンちに乱入してやる。なっ、若葉」


「はいっ。行っても大丈夫ですか?」


「じゃあ、お父さんがいないときにね」


そんな話をしながら、おれたちは学校へと向かった。