しばらくの沈黙が続いたあとベリルがおもむろに発した。

「モリトと言ったか。いつ気が付いた?」

「あ? あんたの声が聞こえた時だよ」

《立ち去れ──》

「日本語だったんでな」

「なるほど」

 ベリルは小さく笑って杜斗の答えに感心した。

「あっ! そういえば日本語だった」

 今更、時弥は気が付いた。

「凡ミスか?」

「お前たちが日本語で話していたのでね」

 英語にするか日本語にするかベリルは悩んだ末に日本語にした。

 恐怖が言語の違いの違和感を隠すと思っていたが杜斗は思ったよりも冷静だったらしい。

「あ! そういえば今も日本語……」

「遅ぇよ」

 杜斗が呆れて溜息混じりに時弥を見つめる。

 時弥は照れたように頭をポリポリとかいた。

「で?」

 杜斗が再度ベリルに聞き返した。

「なんであんな事したんだ?」

「……」

 ベリルの瞳は複雑な色を見せる。