その日の昼間、武は仕事で営業に回っていた。

十二時半から一時半までの休憩時間、昼食を食べ公園である人物とコーヒーを飲んでいた。




『兵藤弘樹』




武の中学からの親友。


「面白いことないかなぁ」

「ねぇよ」

特に何を求めるわけでもなく、二人は遠くを見つめている。

「最近なんか下痢がすごいんだけど」

「あっ、なんか病気なんじゃね?」

弘樹が近況報告をすると、武は興味無さげに軽く流す。

「下痢でか?ってかこの若さでか?・・・あっそうだ。俺、昨日結婚してさ」

「下痢の後にそれを話すな」

「まぁまぁ。流してくれよそこは」

「どっちを?・・・ってか誰と結婚したの?」

「中学ん時の神谷ちゃん」

「おめでと」

「ありがと」

「・・・それだけ?今日の話って」

「そう」


武は弘樹に話があると呼ばれ、それだけかと聞くと弘樹はあっけなく即答した。


「・・・じゃあ、いくわ仕事」


昨日寝違えた首を気にしながら、武は仕事に戻っていった。

そして弘樹はその後、公園に残り二杯目のコーヒーを飲んでいた。

しばらくして、弘樹のもとに一人の初老の男性がやってくる。



「親友か・・・」



男性は、一つ隣のベンチに腰掛けながら弘樹に話しかけた。


「・・・そうだよ。文句あんすか」


弘樹がそう答えると、男は薄ら笑いを浮かべた。


「素人の友達がいるとは知らんかったわ、兵藤。妙な事件に巻き込むなよ・・・?素人を」

「波川さん。首つっこもうとしてるのあんたじゃないすか・・・まだ捕まるような事してませんよ俺」

「・・・まぁそんなスーツで公園うろつくと子供が逃げる・・・気を遣うんだな」


そう言い、男は帰っていった。


男の名は、





『波川茂』



警視庁捜査一課強行犯係。





武と茂はその半日後に出会うことになる。