幸せという病気

病院に搬送され、意識の戻らない遥は集中治療室に入る。

重く静かな待合室で武と祖母は黙って遥の治療を待った。

やがて二時間後、遥が集中治療室から出ると、武と祖母は担当医に呼ばれ、個室へ入っていく。



そして担当医からの説明が始まった。



「最近、彼女変わった症状ありましたか?」



八畳程ある部屋に緊張が走る。



「いえ・・・特には」



武が答えると、医師は重い口調で話す。




「突然ですか・・・高校生ですね・・・何かすでに大学が決まったとかは・・・」



「いえ・・・ありません・・・」









武はすでに察していた。









隣では祖母がずっと下を向き、自分の手を握り締める。






「今現在、彼女が倒れた原因が不明です・・・まだ意識が戻ってませんし、おそらく・・・」










「・・・」










「・・・幸せ病・・・ではないかと思われます・・・」












一気に体の力が抜けた。











涙も出ない。









声も出ない。











ぶつける先は一つしかなかった・・・。









その日は、祖母が遥を見守る事となり、そして武は静かにその場所へ足を向かわせる。




















武が向かっていた先は、竜司のもとだった。