そしてその後、一変して少し悲しい顔をした。







「また・・・戻って来ちゃった・・・」








竜司がそんな遥の顔を見て、冗談を言う。




「じゃあ今度は俺にくれよ」

「おまえなんかにやるかバカっ!」


武も冗談で切り返す。


「なんでですかっ!?おまえなんかって・・・香樹連れて来たの俺ですからね!」

「大体、病院で俺に電話すりゃぁいいじゃねぇか!そっちのが早ぇだろ!」

「・・・そっか・・・そうだな・・・」


そんな会話を聞きながら、遥はその貝を見て思い出すように話し出した。


「遥って名前はね・・・海を見て付けたんだって」

「ん?」

「お母さんが言ってた」

「・・・そっか。香樹はじゃあやっぱり山かな・・・」

「まぁ、字を見るとそれっぽいですね」


武が香樹の字を思い出しながらそう言うと、竜司が考えながらしかめっ面で答える。

そして武は遥に聞いてみた。


「俺は?」

「お兄ちゃんは、ただ・・・画数だって・・・」

「あっ・・・そぉ・・・」




少し残念そうな顔で武は自分の画数を数えだす。




「これはじゃあ・・・私が持ってよっと」




そう言いながら遥は貝を握り締め、両親の想いをかみ締めた。


そしてその小さな貝は、どこか不思議なオーラを放ちながら、遥の手のひらでコロコロと転がっていた・・・。


やがて日が落ち、その日の夜。

武とすみれは久しぶりに映画館でデートをする事になった。



「・・・ポップコーンやめてくんない?」



武が鼻をつまみながら隣のすみれに話し掛ける。



「えぇ?鼻つまんでちゃわかんない」


そんな武に対し、すみれはポップコーンを口に放りながら意地悪を言った。