幸せという病気

「武、まだ兵藤とつるんでたのか?」

「あぁ」

「おまえも気をつけた方がいいぞ?」

「え・・・?」

「あの頃じゃねぇんだし・・・もう俺たち。喧嘩だけで生きていける歳じゃねぇんだから・・・」

「そうだな・・・」


悲しい顔で武が答えると、別の同級生達が軽い声で話し始める。


「神谷も馬鹿だなぁ、兵藤なんかと結婚しなけりゃ幸せになれたかもしれねぇのに」

「でも、幸せ病にはならねぇじゃん」

「そりゃそうだ」

「兵藤なんか・・・か・・・」




武は、心の中で泣いた。



悲しい夜だった・・・。









時に時代は人を変える。

いくら笑いあった仲間でも、いくら同じ夢を追った友でも・・・。

武は時代に流されず、変わらない弘樹を改めて尊敬した。


変わらない事が正しいとも、変わる事が間違っているとも、誰もその答えはわからないかもしれない。





それでも武は、自分なりにその答えを見つけ出したようだった。