白い綿毛がふわふわと舞う。風に乗り、何十にも及ぶ綿毛は自分の居場所を探すべく旅へと出た。子供達は散り散りになり、もう会う事はないのかもしれない。俺はそんな様子を見送れずに静かに息をひきとっていた。

 あの時の子供、もう子供とは言えねえが、奴だけが看取ってくれた。男が泣くんじゃねえよ、と俺は奴を諌めた。だが、奴の涙は止まらなかった。

――俺は死ぬんじゃねえ、生まれ変わるんだよ。

 最後に遺した言葉だ。

 俺は何十もの綿毛の一つ一つに命を残した。

 きっと来年の春には大人になっているだろう。この長いホームレス人生の中で、誰かに会えたのは奇跡だ。誰もいない静かな場で死ぬ奴も多い。踏みにじられ、摘まれて生を終える連中もいる。

 俺は、幸せ者だ。安らかに旅立てるのだから。息子とも呼べる存在に見送られるのだから。

 今度はおめえの番だぜ、と俺は励ます。と言っても空の上じゃ届かねえかもしれねえが……。