□ 「タマ!」 声がした方向に振り返ると、大人になった懐かしい顔が手を振った。 「久しぶり~!ナナ、あんたちょっと太ったんじゃない?」 「タマ、それ禁句」 「っわーん、タマも亜衣ちゃんも大っ嫌いだぁ!」 「あーぁ、ばかタマ」 懐かしい廊下に騒がしい私達の笑い声が反響する。 冷たいコンクリートで囲まれたそこは、1月の寒さからほんの少しだけ守ってくれていた。 彼がいなくなって10年が経って、私達は今日、成人した。