「でも、どんな〝すき〟でも、カズ兄に伝えるべきじゃなかった…。伝えたせいで、私のせいで、傷ついた人がいたんだから…」


思い出す、彼女

カズ兄の彼女、瑛李香さん。



あの日、

黒い服に身を包んだ人達が溢れる中、
もう目を覚まさないカズ兄と、最後の別れの日、


瑛李香さんが現れ、
私に、言った言葉。


よく覚えていないあの日のこと、

それだけは鮮明に覚えていた。




『あなたが、和季の妹?』

ぼんやりと顔を上げると、そこには覚えのある顔が私を見下ろしていた。

ボブの黒髪に華のある綺麗な女の人。
成佳の制服を着ていた。


ぼうっとする頭で、彼女が瑛李香さんだと気付くのに、しばらくかかった。

気付いて、ふらりと立ち上がった、
瞬間、



パァン!


痛みと衝撃が、私の頬にはしった。


おぼつかない足で立ち上がった私は、その衝撃で、壁に吹き飛んだ。