少しずつ、

少しずつ、

自分の記憶を思い出して、
自分の気持ちがわかってきて、


何がつらくて、

何が苦しくて、

何を想うのか、


闇に捕われそうになるたび、

一人で抱えずに、
青磁先生に話した。


上手く話せているのかはわからなかったけど、
想うまま、
感じるまま、


青磁先生に話した。




「私、私は、カズ兄が好きでした。…それが兄としてなのか、男の人としてなのか、わからなかった。
今も、わかりません」


静かに、
少しずつ話す私の言葉を、
青磁先生は、真っすぐに聴いてくれた。


その話をした時は、

窓の外から冷たい雨の音が聴こえて、
青磁先生と私は黒いソファに並んで座って、

青磁先生のブラックの珈琲と
私のココアの湯気が

あたたかく感じた。



いつしか、季節は
冷たい風を寒いと感じるようになっていた。