次々と打ち上げられた花火で煩かった空は静かになり、あっという間に休憩時間に突入した。





「なぁ、留美元気にしとる?」


また始まらないかな、なんて思っているといきなり話しかけられた。前に座ってる運転手に。



「……え?」


「留美、妹やろ?」
留美を知っているような口振り。

「え、留美…留美は、元気ですよ。 あの、留美とはどういう…?」

ミラー越しに顔をじっと見ると目があった。


「あ、俺?元彼やよ。留美の。
あんたたしか留美のねーちゃんやろ。俺のこと覚えてへん?」

彼はそう、聞き慣れない関西弁で話す。

「すみません、覚えてないです」

面識があるらしい。だけど覚えてない。 というより、留美の元彼なんていちいち覚えてたらきりがない。
妹の元彼なんだと知って、物凄くこの空間が居心地の悪いものになった。
こういう時ってあんまりいい思い出がない。



「ふーん、まぁええわ。 てか、あんたら相変わらず全然似てへんな」
そんな私をじろじろ見て、それが可哀想だとでも言うように言う。


「……………」
なんて返していいのかわからない。 何でこんな風に言われなきゃなんないのかもわからない。
可愛い妹と違って姉のお前は可愛いくないなって?なんかもう、失礼すぎる。
むっとしたまま何も言わない私を見て、ニヤっと口角を上げた。


「思ってたんやけど、あんた今でも留美嫌いやろ」
それは、さも楽しそうに。



「え?……嫌いじゃないですよ」
ほんとになんでこんなこと言われなきゃならないのかわからない。
今でもって、昔からずっとそう思ってたの?
留美と付き合ってる時から、面識もさしてないのにこいつは妹を妬んでるって??
可愛い妹を妬んで嫌ってる姉に違いないって?
ろくに話したことも無いくせに、そんな風に思われてた事がショックだった。




「へぇ?じゃあ好きなんや?」


聞いてるくせに、私の答えを知ってるかのような、決めつけてるようなその態度にイライラする。
こんな嫌みな人ってなかなかいないと思う。

「はい。当たり前じゃないですか。」
私の妹ですよ、と。