優さんのその仕草に、ずっとこっちを見てたらしい周りのお姉さん達が一層色めき立った。
ところどころから聞こえる、感嘆のため息や、必死に抑えつけた悲鳴にも似た声。

優さんはまさに王子様ってくらい整ってて綺麗だから。どんな些細な事ですら絵になって美しい。


別にいいですよ。

周りの人同様、しばらく見とれてた私はとっさにそう言った。言った後ですぐ後悔した。

せっかく、優さんが林檎飴くれるって言ってくれたのに。

優さんはそうか、ってつまらなさそうに答えて前を向いた。
私はさっきの仕草が頭から離れなくて恥ずかしくて、視線を泳がせてた。


すると屋台の向こう側の道路に、見覚えのあるアイボリーの髪が見えた。


太郎さんだ……だってあの人の周りだけ遠めからわかるほど空気が違う。あの独特な雰囲気。



あ…、隣にいる女の人がこの前会った子と違う。


なんか今日の人は年上っぽい。

大人の女性で、高学歴のキャリアウーマンよりも夜のお仕事の方ってかんじで華やかな。



私の視線に気付いたらしい太郎さんは

「あ、サキちゃん。また会ったねー」

と向こう側から手をひらひらさせながら、声をかけてくれた。

そんなに大きな声じゃなかったけど、存在感のせいでみんなが私の方を見る。

太郎さんは相変わらずニコニコと笑ってた。