闇夜の略奪者 The Best BondS-1

 荒野の地平線に姿をほんの少し残しただけの太陽のもとで二人は小指を絡ませて約束を交わした。他の誰も知らぬ、男同士の約束。
 「さ、そろそろ帰るか。暗くなってきやがったし、何より皆心配してっしな」
 家に帰ればきっと泣きそうな顔をした弟妹達が出迎えてくれる。食卓に、料理を沢山並べて。
 謝る弟妹達にロウウェルは「こっちこそごめんなさい」をして、タイミングを見計らった母が「さあ、料理が冷めない内に食べちまうよ」と言って笑うのだ。
 いつもどおりの日常が始まる。
 そう、思っていた。
 「うん。帰る」
 ロウウェルが柵の上で方向転換をしたとき。
 みしり、と嫌な音が聞こえた。
 雨ざらしで腐っていたのだろう。
 ゼルとロウウェルの体重に耐えかねた柵が地雷側に傾ぐ。
 声を発する間も無かった。
 バランスを崩したロウウェルの軽い小さな体が地雷地帯へと放り出される。
 目の前の情景がコマ送りのように、ゆっくりと動いていた。
 目を見開いたロウウェル。
 こげ茶色の瞳には同じく目を見開いた自身が映っている。
 体が思考を超えて動く。必死に手を伸ばして、そして永遠にも思える一瞬の後……――。
 地を這うような爆音と爆風が土を舞い上げた。
 木屑となった柵の破片が舞う。
 耳鳴りだけを残して音の余韻が消え去り土埃に奪われていた視界が晴れた時、まず目に映ったのは雲一つ無い空だった。
 目だけを動かすと、粉々に砕け散った柵の向こう側に尻餅をついているロウウェルの姿が見えた。
 「……ゼル兄……っ!!」
 口を大きく開けたロウウェルの喉から出たのは搾り出す小さな叫び。
 大丈夫だ、心配すんな。そう言って頭を撫でてやりたいのに、体が思うように動かない。
 「ゼル兄っ!」
 ロウウェルが必死に名を呼ぶから、答えなければとどこか朦朧とする意識の中で体を起こした。
 「ケガ……ねェな?」
 外傷らしい外傷は擦り傷だけだと確認し、ゼルは目を細めた――嬉しそうに。
 だがロウウェルはそれには答えず、引き攣った顔で引き攣った声を漏らした。
 「ひっ!」
 何かを指すように上げられたロウウェルの腕が震えている。否、震えているのは腕だけではない。全身を震わせ強張った表情のロウウェルの歯が、がちがちと音を鳴らす。