闇夜の略奪者 The Best BondS-1

 「あたし、ロウ探す!」
 最初にそう言い出したのは水桶の時同様、ミラーユだった。
 「おれも!」
 「わたしも探すわ」
 今にも駆け出しそうな勢いの弟妹達に首を横に振る。
 「いや、オレが探す。オマエ等は家に戻れ。水が無ェと晩飯が出来ねェし、母ちゃんが心配すンだろ。帰って、母ちゃんに全部話して、晩飯の用意を手伝え。悪いと思うンならロウが帰ってきた時にウマいメシを食わせてやれ。いいな?」
 弟妹の返事も聞かずゼルは全速力で寺子屋の方へと走り出した。
 ロウウェルの無事をただ、祈って。
 先ほど弟妹達に言ったようにロウウェルの行動範囲は狭い。
 いつも家で数少ない本を繰り返し読んでいるし、外に出る時はいつも弟妹達の後ろにくっついているロウウェルは一人で行動することがほとんどない。引っ込み思案なのも、行動範囲が狭い原因の一つだ。
 そう遠くへは行けないはずだ。
 知的好奇心は強いが、冒険心が同年代から比べると極端に少ない。きっと一人で心細い想いを持て余しているだろう。
 ある程度肉体が出来上がりつつある男が全速力で走れば、寺子屋までほんの五分ほどの距離。
 寺子屋の前に着いて徐々に速度を落とす。
 からりとした空気が毛穴という毛穴から染み込み、代わりに汗が噴出す。
 妙に早く鼓動する心臓が不快感と不安を煽り、全くあがってもいない息を整える。
 「くっそ……」
 地面を蹴り、辺りを見回すが小さな影は見当たらない。
 寺子屋の裏に回る。――居ない。
 自分は過保護すぎるのかもしれない、と思う。けれど、自分が注がれた愛情の分だけ、手が届く人達には注ぎたい。
 六歳はまだ庇護を受けるべき年齢だと思う。
 寺子屋を越えて、同じ六歳の子どもが居る家のドアを叩いてロウウェルの行方を聞くが、母と同じような体格をしている奥さんは首を横に振るばかりだった。
 自分も探すと言い張る奥さんの申し出を断り、ゼルは尚も走った。
 しばらく走った頃だった。
 「ロウ!」
 村の外れ……通り道と地雷地帯の境目である木の柵の上に座って地雷地帯の方角を見つめている小さな影。