寺子屋から家までは真っ直ぐな一本道で、子どもの足で歩いて二十分位の距離だが、それでもここは地雷の村だし、どんな危険が潜んでいるか知れないからだ。
重ねて問うとアルラウドは少し俯いた。
「え……と、あの。先に……先に帰ったよ。会わなかった?」
「アル」
厳しい声でゼルが制する。
「眉が上がってンぞ。オマエが嘘つく時の癖だ」
アルラウドの眉間のあたりを小突くが、ゼルの目は笑っていない。
西日が固まったアルラウドの影を長く伸ばす。
「あいつ……ムカつくんだよ」
やがてポツりと漏らされた言葉。
気の弱いロウウェルを率先して守る役割を担っていた次男の言葉だけにゼルは絶句した。
「ケンカか?」
「嫉妬よ」
セリアが言葉を代弁し、テリアがその言葉を補足する。
「ロウが優秀なのはわかるわ。けれど……姉や兄の立つ瀬が無くなるのは困るって言いたいのよ」
「あいつ、いい気になってんだよ。自分が他の誰よりちょっと勉強できるからって。」
「間違いを指摘されたのがディルは気にくわないの」
「あら、それは貴女もよ、セア」
「人の事言えないでしょ、テアも」
自己弁護を図ろうとする弟妹達の言葉を遮る。
「で? ロウは何処だ?」
「知らないよ。勉強が終わった途端、どっか行っちゃったんだ。言っとくけど、おれ達、ちゃんと探したぞ」
「……オマエ等、わかってんのか?」
溜め息を一つ吐いて諭すような口調に変える。
「アイツは賢い。言葉も沢山知ってる。ケドな、地雷の文字が読めるとは限らねェだろ。道も、寺子屋から家の一本道の間しか知らねェ。忘れンな。ロウはまだ六歳なんだ! 守ってやらねェでどうする!」
最悪のパターンを口にするのを躊躇うが、それでも教えてやらねばならない。
「未だ残る地雷地帯に入っていたらどうする……。足が無くなったら! 死んじまったら! オレはオマエ等なら大丈夫だと信じて寺子屋まで送り迎えをしねェんだ。ロウもオマエ等を信じて後ろを歩いてんじゃねェのか! 二人の信頼を裏切って、オマエ等は何笑ってやがる!」
腕や足が無い者たちが日常の生活をするのにどれだけ不便な思いをしているのかを目の当たりにしている弟妹達の顔から血が引いていく。
次に浮上するのは罪悪感と正義感だ。
重ねて問うとアルラウドは少し俯いた。
「え……と、あの。先に……先に帰ったよ。会わなかった?」
「アル」
厳しい声でゼルが制する。
「眉が上がってンぞ。オマエが嘘つく時の癖だ」
アルラウドの眉間のあたりを小突くが、ゼルの目は笑っていない。
西日が固まったアルラウドの影を長く伸ばす。
「あいつ……ムカつくんだよ」
やがてポツりと漏らされた言葉。
気の弱いロウウェルを率先して守る役割を担っていた次男の言葉だけにゼルは絶句した。
「ケンカか?」
「嫉妬よ」
セリアが言葉を代弁し、テリアがその言葉を補足する。
「ロウが優秀なのはわかるわ。けれど……姉や兄の立つ瀬が無くなるのは困るって言いたいのよ」
「あいつ、いい気になってんだよ。自分が他の誰よりちょっと勉強できるからって。」
「間違いを指摘されたのがディルは気にくわないの」
「あら、それは貴女もよ、セア」
「人の事言えないでしょ、テアも」
自己弁護を図ろうとする弟妹達の言葉を遮る。
「で? ロウは何処だ?」
「知らないよ。勉強が終わった途端、どっか行っちゃったんだ。言っとくけど、おれ達、ちゃんと探したぞ」
「……オマエ等、わかってんのか?」
溜め息を一つ吐いて諭すような口調に変える。
「アイツは賢い。言葉も沢山知ってる。ケドな、地雷の文字が読めるとは限らねェだろ。道も、寺子屋から家の一本道の間しか知らねェ。忘れンな。ロウはまだ六歳なんだ! 守ってやらねェでどうする!」
最悪のパターンを口にするのを躊躇うが、それでも教えてやらねばならない。
「未だ残る地雷地帯に入っていたらどうする……。足が無くなったら! 死んじまったら! オレはオマエ等なら大丈夫だと信じて寺子屋まで送り迎えをしねェんだ。ロウもオマエ等を信じて後ろを歩いてんじゃねェのか! 二人の信頼を裏切って、オマエ等は何笑ってやがる!」
腕や足が無い者たちが日常の生活をするのにどれだけ不便な思いをしているのかを目の当たりにしている弟妹達の顔から血が引いていく。
次に浮上するのは罪悪感と正義感だ。

