「運命とか一目惚れって信じる方? や、僕はそんなの信じてなかったんだけど、人生何があるかわかんないな。あ、いきなりこんなの言われても信じられないよね。それならじゃあまず、誠意を伝えることから始めなくちゃだな。よし、ジストさんは頑張るぞ」
一体どんな頭の構造をしているのだろうか、この男は。
競歩かと思える程の速さで歩く――逃げるというべきか――エナが、拒絶を顕わにしているのは端から見たってわかるだろうに、自らをジストと呼んだこの男は脳味噌に蛆(ウジ)でも湧いているのか春爛漫な思考回路を披露してくれる。
「も少し歩いたところに茶店があるから、そこで二人の将来について語り合おう! 結婚式は盛大にしようね。エナちゃんの艶姿、皆に自慢しないとね。子どもは何人欲しい? 男は要らないなー。女の子がいい。あ、でもジストさんとエナちゃんの子どもだったら絶対可愛いから、心配しちゃうな、どうしよう?」
一体何の心配をしているのか。途方もなく飛躍した話にエナの堪忍袋の緒が痙攣を始める。
ただでさえ、先ほど資産家の家での交渉が決裂し大問題が浮上したばかりなのだ。普段から細い堪忍袋の緒は現在、在って無いようなものだった。
「エナちゃんてばそんなに早く歩いちゃって。よっぽど話がしたいんだね、ジストさん感激だなぁ。でも大丈夫だよ、ジストさんはもうエナちゃんのものだからね」
耐えた。
エナにしてはよく耐えた方である。
けれど、堪忍袋の緒は遂に大きな音を立てて切れてしまった。
エナは急に立ち止まり、握り拳を作って振り向いた。
そして、冒頭の言葉。
「うるっっっさいっつーの!!」
長閑な昼間の風景を揺り動かすエナの怒声。
だが、その直後、エナの顔は凍りついた。
其れも其のはず。激昂したエナを前に、男はさも嬉しそうに笑ったのである。
「図星だからって怒鳴るなんて、ほんと可愛いなあ」
がっくりと肩の力が抜けたところで、誰がエナを責められよう。
憤怒の形相を見てもここまで自分勝手な解釈ができるものなのか。怒る気さえ失う程に的外れなことを言い続けた男の粘り勝ちだった。
溜め息を、一つ。
「ああもうわかった! あたしの負け! コレでいい!?」
それは呆れや諦めよりも、癇癪に近かった。
一体どんな頭の構造をしているのだろうか、この男は。
競歩かと思える程の速さで歩く――逃げるというべきか――エナが、拒絶を顕わにしているのは端から見たってわかるだろうに、自らをジストと呼んだこの男は脳味噌に蛆(ウジ)でも湧いているのか春爛漫な思考回路を披露してくれる。
「も少し歩いたところに茶店があるから、そこで二人の将来について語り合おう! 結婚式は盛大にしようね。エナちゃんの艶姿、皆に自慢しないとね。子どもは何人欲しい? 男は要らないなー。女の子がいい。あ、でもジストさんとエナちゃんの子どもだったら絶対可愛いから、心配しちゃうな、どうしよう?」
一体何の心配をしているのか。途方もなく飛躍した話にエナの堪忍袋の緒が痙攣を始める。
ただでさえ、先ほど資産家の家での交渉が決裂し大問題が浮上したばかりなのだ。普段から細い堪忍袋の緒は現在、在って無いようなものだった。
「エナちゃんてばそんなに早く歩いちゃって。よっぽど話がしたいんだね、ジストさん感激だなぁ。でも大丈夫だよ、ジストさんはもうエナちゃんのものだからね」
耐えた。
エナにしてはよく耐えた方である。
けれど、堪忍袋の緒は遂に大きな音を立てて切れてしまった。
エナは急に立ち止まり、握り拳を作って振り向いた。
そして、冒頭の言葉。
「うるっっっさいっつーの!!」
長閑な昼間の風景を揺り動かすエナの怒声。
だが、その直後、エナの顔は凍りついた。
其れも其のはず。激昂したエナを前に、男はさも嬉しそうに笑ったのである。
「図星だからって怒鳴るなんて、ほんと可愛いなあ」
がっくりと肩の力が抜けたところで、誰がエナを責められよう。
憤怒の形相を見てもここまで自分勝手な解釈ができるものなのか。怒る気さえ失う程に的外れなことを言い続けた男の粘り勝ちだった。
溜め息を、一つ。
「ああもうわかった! あたしの負け! コレでいい!?」
それは呆れや諦めよりも、癇癪に近かった。

