闇夜の略奪者 The Best BondS-1



 トルーアから南に歩いて二時間の場所にある船着場には髑髏(ドクロ)の旗を掲げた船が数多く停泊している。
 その中でも同業者の目を惹いていたのは髑髏に大鎌が描かれた一際大きな船、海賊【影】。北の海では滅多にお目にかかれない海賊ランクを持つ船上では、遠征成功の祝宴と闇市成功の前祝いと称し、まだ太陽の高い頃から浅い夜の現在まで、その名前の印象からは程遠い賑やかさで宴会が続いている。
 「かんぱーいっ!! 」
 事あるごとに手に握られた小さな樽を高く掲げる行為を飽きることなく、繰り返す。
 この様子だけ見たならば、此処が残虐非道と名高い海賊船の上だとは誰も思わないだろう。
 其処に、一気に飲み干した手樽を同時に床に置いたある二人の男がいた。
 別段、特別何かに優れているわけでもない。何処にでも居そうな、ただ人より少し海と冒険が好きなだけの若者たちだ。
 酒と雰囲気で顔を赤くした顔の丸い男が褐色の肌をした男に話し掛けた。
 「ところでよぅ、今この船にエディがあるってのは本当か?」
 五十名を越す人員が乗っていれば情報とて浸透するまでには多少の時間が掛かる。
 「ああ、エディな。確かにあるってぇ話だぜ。まあ、俺も整備係から聞いたんだけどよ」
 戦利品などの情報は大概、戦闘員から見張りへ、見張りから会計係や食堂係へ、そこからようやく整備係へ渡り、掃除係などの雑用系に回ってくるのである。
 「だよなあ。けどよ、闇市に出す荷物の中には無かったんだよな」
 丸顔の男は言いながら考え込んでいるとそこへ、ひょい、と別の男が顔を出した。
 「あれは売らないって話だぜ」
 「ラグさん!」
 ふわふわの猫っ毛を風に揺らしているラグと呼ばれた男は戦闘員の内の一人で、頭目の片腕的な存在だ。本名をランガードという。