「こっちはお前に教えることなんて何もないって言ってるんだぜぇ? 頭悪ィんじゃねえか、お前」
エナは「あーあ」と声を零した。
これは完璧に舐められている。金髪の青年が怒鳴れば怒鳴るほど、相手は面白がり見下すだけだ。そして下手をして怒らせでもしたら身包み剥がされてポイだ。だがまあ命まで取られやしないだろう。
背を向けて立ち去ろうとしたエナの足がぴたりと止まる。――青年の口から飛び出した言葉によって。
「あれはただの剣じゃねェ! エディだ! 賊なんかに手に負えるもんじゃねェんだよ!」
――エディ!?
エナは勢いよく振り返った。
エディとは人の命を食い物にする妖刀の代名詞。其れが誰の手によって鍛えられたのかは定かではない上に現存が確認されている数も極端に少ないが、もしも本物のエディならば、専門の筋に売り飛ばせば立派な家が一軒建つ値段になる。
「賊なんか、だと!? てめぇ、影団を愚弄する気か!?」
「あぁ!? 誰もてめェらをバカにしてなんか……。……ん? ひょっとして……!」
エナはその遣り取りに、にやり、と笑った。賊全体を馬鹿にした青年の言葉に成り行きを観覧していた賊の男たちは罵声を上げたが、言い合っていた当の男たちが一瞬焦ったような顔をして押し黙ったからである。
「オレからエディ盗りやがったンはてめェらか!」
棚から牡丹餅、渡りに船とはこのことだ。
「いーこと、聞いちゃった」
抑えきれない笑いを手で隠し、エナは肩を揺らした。
どうやらエディは影団の手に渡っているらしい。大金を必要とする自身に神が用意しておいてくれたとしか思えない幸運だ。まあ、話の流れから察するにそれは元々この青年のものなのであろうが、そんなことに頓着するエナではない。
振って湧いた朗報はエナの中の下がったテンションを跡形もなく吹っ飛ばした。
「絶対。失敗、するわけにはいかない、や」
念には念を入れて、憂いは全て排除して。そこまでしても慎重になりすぎるということはない。
エナは脳裏に深紅の色彩を纏った男を思い浮かべた。
「やっぱり、要る」
どうあっても、彼を巻き込もう。
そう決めてエナは駆け出した。
未だ続く青年の怒声など、もうエナにとってはどうでもよいものだった。
エナは「あーあ」と声を零した。
これは完璧に舐められている。金髪の青年が怒鳴れば怒鳴るほど、相手は面白がり見下すだけだ。そして下手をして怒らせでもしたら身包み剥がされてポイだ。だがまあ命まで取られやしないだろう。
背を向けて立ち去ろうとしたエナの足がぴたりと止まる。――青年の口から飛び出した言葉によって。
「あれはただの剣じゃねェ! エディだ! 賊なんかに手に負えるもんじゃねェんだよ!」
――エディ!?
エナは勢いよく振り返った。
エディとは人の命を食い物にする妖刀の代名詞。其れが誰の手によって鍛えられたのかは定かではない上に現存が確認されている数も極端に少ないが、もしも本物のエディならば、専門の筋に売り飛ばせば立派な家が一軒建つ値段になる。
「賊なんか、だと!? てめぇ、影団を愚弄する気か!?」
「あぁ!? 誰もてめェらをバカにしてなんか……。……ん? ひょっとして……!」
エナはその遣り取りに、にやり、と笑った。賊全体を馬鹿にした青年の言葉に成り行きを観覧していた賊の男たちは罵声を上げたが、言い合っていた当の男たちが一瞬焦ったような顔をして押し黙ったからである。
「オレからエディ盗りやがったンはてめェらか!」
棚から牡丹餅、渡りに船とはこのことだ。
「いーこと、聞いちゃった」
抑えきれない笑いを手で隠し、エナは肩を揺らした。
どうやらエディは影団の手に渡っているらしい。大金を必要とする自身に神が用意しておいてくれたとしか思えない幸運だ。まあ、話の流れから察するにそれは元々この青年のものなのであろうが、そんなことに頓着するエナではない。
振って湧いた朗報はエナの中の下がったテンションを跡形もなく吹っ飛ばした。
「絶対。失敗、するわけにはいかない、や」
念には念を入れて、憂いは全て排除して。そこまでしても慎重になりすぎるということはない。
エナは脳裏に深紅の色彩を纏った男を思い浮かべた。
「やっぱり、要る」
どうあっても、彼を巻き込もう。
そう決めてエナは駆け出した。
未だ続く青年の怒声など、もうエナにとってはどうでもよいものだった。

