――今回はさすがに一人じゃ危ないってのに。
心中で呟き、エナは親指の爪を噛んだ。
酔狂に命を賭けているわけではない。寧ろ命を賭けたいなどと思ったこともない。
死にたくない、死ぬわけにはいかない、と思うからこそ闇屋に依頼することにしたというのに、この間抜けな結果は一体なんだ。
残虐非道な頭領を持つ影団を相手に一人で立ち向かうことになったとエナは嘆く。
それでも今更引くという選択肢は彼女には無かったのだけれど。
「あー、どうしよっかな……」
エナは項垂れ、地面に向かって言葉を吐いた。
周りの活気溢れる音が恨めしい。だがこのまま雑踏の中で暴れていても何も始まらない。
太陽は既に傾き始めていた。
変わってしまった予定に合わせ、新しく準備を始めなければならない。
エナは嘆息し市場の方へと歩き始めた。
それから半時ほど経った頃、市場の前であれこれと買い揃えなければならないものと作戦の算段を指折り考えていたエナは聞こえてきたの怒声にふと視線を投げた。
人垣が出来ていて何も見えない。
「?」
野次馬根性丸出しでエナは人垣の間を割っていく。背が低いと、こういうときに余計な体力を使わねばならない。半ば強引に掻き分けた先で声と共に飛び込んできた色彩は金と銀。
「!」
夕暮れの光を照り返すその色彩のコントラストにエナは目を細めた。
一瞬の後にその正体を知る。
濃紺の額充ての上、今は夕暮れに染まり朱金になっているが元はおそらく眩い金の短髪と、体にぴったりと沿う黒のノースリーブから伸びた逞しい腕の先の銀。
「義手……?」
義手を装着している人物を見たのは初めてだった。金属の義手とは往々にしてとても高価なものであるし、またそれを使いこなすには並々ならぬ努力が必要だからだ。
荒削りだが精悍な容姿の男。エナとそう年齢は変わらないだろう。
灰色に薄い青を混ぜたような瞳が炎を宿している。怒鳴っている内容に耳を傾けた。
「てめェら知ってんだろ!? 教えろって、なあ!」
金髪の男が今にも殴りかかりそうな勢いで怒鳴れば、あまり育ちがよろしくなさそうな数人の男がにやにやと笑う。
心中で呟き、エナは親指の爪を噛んだ。
酔狂に命を賭けているわけではない。寧ろ命を賭けたいなどと思ったこともない。
死にたくない、死ぬわけにはいかない、と思うからこそ闇屋に依頼することにしたというのに、この間抜けな結果は一体なんだ。
残虐非道な頭領を持つ影団を相手に一人で立ち向かうことになったとエナは嘆く。
それでも今更引くという選択肢は彼女には無かったのだけれど。
「あー、どうしよっかな……」
エナは項垂れ、地面に向かって言葉を吐いた。
周りの活気溢れる音が恨めしい。だがこのまま雑踏の中で暴れていても何も始まらない。
太陽は既に傾き始めていた。
変わってしまった予定に合わせ、新しく準備を始めなければならない。
エナは嘆息し市場の方へと歩き始めた。
それから半時ほど経った頃、市場の前であれこれと買い揃えなければならないものと作戦の算段を指折り考えていたエナは聞こえてきたの怒声にふと視線を投げた。
人垣が出来ていて何も見えない。
「?」
野次馬根性丸出しでエナは人垣の間を割っていく。背が低いと、こういうときに余計な体力を使わねばならない。半ば強引に掻き分けた先で声と共に飛び込んできた色彩は金と銀。
「!」
夕暮れの光を照り返すその色彩のコントラストにエナは目を細めた。
一瞬の後にその正体を知る。
濃紺の額充ての上、今は夕暮れに染まり朱金になっているが元はおそらく眩い金の短髪と、体にぴったりと沿う黒のノースリーブから伸びた逞しい腕の先の銀。
「義手……?」
義手を装着している人物を見たのは初めてだった。金属の義手とは往々にしてとても高価なものであるし、またそれを使いこなすには並々ならぬ努力が必要だからだ。
荒削りだが精悍な容姿の男。エナとそう年齢は変わらないだろう。
灰色に薄い青を混ぜたような瞳が炎を宿している。怒鳴っている内容に耳を傾けた。
「てめェら知ってんだろ!? 教えろって、なあ!」
金髪の男が今にも殴りかかりそうな勢いで怒鳴れば、あまり育ちがよろしくなさそうな数人の男がにやにやと笑う。

